実験装置 Facility

UPS/2PPES

Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy(UPS)

UPS(紫外光電子分光法)とは、紫外光を試料に照射した時に放出された電子の運動エネルギー分布を測定することによって、試料の表面付近数層の原子の深さの価電子状態を調べる方法です。 また、高いエネルギー分解能を利用して、様々な材料の仕事関数を測定することも可能です。

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Two Photon PhotoEmission(2PPE)

2光子光電子分光法(2PPE)とは、光源にフェムト秒超短パルスレーザーを用いて、まずポンプ光で測定する試料の占有準位にある電子を非占有準位まで励起し、その後プローブ光によって真空準位上に励起された光電子の運動エネルギーを測定することで、表面電子準位を調べる方法です。この方法では、非占有準位の分光測定を目的としますが、特に表面に局在した準位が選択的に観測されることが特徴です。また、ポンプ光とプローブ光の照射に時間差をつけることで、励起電子の時間変化を測定することができます。

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走査プローブ顕微鏡

走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope)

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走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope:STM)は原子スケールの表面形状を実空間で観察することを可能にした顕微鏡であり、1982 年にIBM Zürich研究所のBinnig とRohrer により発明されました。X,Y,Z 軸方向に自由に制御できる圧電素子に極めて鋭くとがらせた金属探針を取り付けます。試料表面に1nm ほどまで近づけ、表面と探針間にバイアス電圧をかけたときに流れるトンネル電流をフィ-ドバック制御に用いて、 表面の原子尺度の起伏を観察します。しかし、STM で得られる像は、表面原子そのものではなく試料表面におけるフェルミエネルギー近傍の電子状態密度の二次元マッピングです。また原子配列だけでなくトンネル分光法によって表面電子状態も測定することができます。

走査トンネル分光(Scanning Tunneling Spectroscopy)

トンネル電流‐印加電圧特性から表面電子状態密度のエネルギー分布を求める手法をトンネル分光法と呼びます。とくに、STMと連動させて、探針走査中の各点で電流‐電圧特性を調べ、表面電子状態密度のエネルギー分布を原子スケールの空間分解能で描き出す手法を、走査型トンネル分光法(Scanning Tunneling Spectroscopy:STS)と呼びます。

原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)

光学顕微鏡はレンズなどを用いて非常に小さな領域を視覚的に拡大し、肉眼でも見えるようにする装置です。一方で原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)は探針を用い、試料表面をなぞるようにして動かすことで領域を拡大観察できる顕微鏡(SPM)の一種です。AFMは探針と試料表面の間に働く微小な力を検出し、その力が一定であるような垂直距離(Z)を保ちながら探針を水平方向(X,Y)に走査することで表面形状の像を得ることができます。

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またAFMの測定方法にはコンタクトモード、ノンコンタクトモード、タッピングモード、フォースモードなどの方式があり。 これらを使い分けることで様々な試料の特性(生体or非生体,硬度)や測定環境(温度、空気中、液体中、真空中)に対応ができます。 空間分解能は探針の先端径に依存しますが原子・分子レベル(0.1~10nm)での表面観察が可能です。これは光の波長(100~1000nm)に依存する光学顕微鏡の分解能をはるかに上回っています。

イオン散乱

実験装置・理論

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圧力が6.0×10-6Paであった真空槽に、5.0×10-4PaになるまでHeガスを入れ、イオン源からHe+ビームをタングステンW(仕事関数4.51eV)の試料台に塗布された試料の表面に入射させます。試料台は接地され、その角度θを変え測定を行います。散乱された正電荷と負電荷の粒子は試料とチャンネルトロン間の電場で弁別します。さらに図に示すように、試料とチャンネルトロン間にヘルムホルツコイル(Φ2.2cm)を設置して負電荷のHe-と電子を弁別し、それぞれ観測したい粒子のみを選択してカウントを行います。また、ヘルムホルツコイルの代わりに4枚のグリッドのポテンシャル障壁で構成される静電アナライザーを設置します。両端は接地し、中の2枚の電圧によって散乱粒子のエネルギー分布を調べる実験も行います。

振動分光

ラマン分光

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ラマン分光法はCWレーザーを試料に照射し、入射光とは異なる振動数を持つ物質固有のラマン散乱光を解析することで分子構造などを調べる方法です。ラマン分光の特徴としては液体や固体、物質の状態関係なく非破壊で測定ができる点です。

超高速光過渡応答分光

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コヒーレントフォノン分光法はフォノンの振動周期より十分短い時間幅のパルスレーザーを用いることで、フォノンをコヒーレントに励起します。このコヒーレントな振動は、全体の平均をとっても相殺されず、ポンププローブ法により実時間でフォノンダイナミクスを観測ができ、その情報からフォノン振動の緩和時間も求められる利点をもちます。ポンププローブ法とは、ポンプ光でフォノンを励起した後に、時間遅延を行ったプローブ光を照射することで、反射率の変化を時間軸でおえる手法です。このような実時間振動はフーリエ変換によって周波数領域の情報も得ることができます。

生体試料観察

ninjin 人参の種子の表面組織。

走査電子顕微鏡 (SEM)

電子線を照射して試料表面で弾かれた電子を用いて表面の形状を観察する装置です。固体の表面の膜形成などをミクロン(μm)より細かい分解能で観察できるだけでなく、低真空で観察することで生体表面に対するイオンやプラズマの照射によるダメージを見ることができます。

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散乱・反射のいずれの電子にも対応する低真空対応SEM。右に見える黒い装置は通常の光学顕微鏡。